自園ではほぼ全ての桃をJA選果場へ出荷しています。
収穫した桃はまず自園の作業場で出荷できるレギュラー品と加工品、ロスに分けてから、レギュラー品のみを専用のコンテナへ並べて選果場へ運びます。
選果場へ出荷した後は機械による光センサーと人の手によって選別された後、市場へ出回ります。
今回は選果場に出荷する前に自園の作業場で選別する工程をご紹介させて頂ければと思います。
目次
基準はどの様に決めている?
JA指導会で教えていただいた基準に従ってひとつひとつ目視で桃を分けていきます。
穿孔細菌病(せんこうさいきんびょう)
桃栽培をする上で殲滅が難しい宿敵、穿孔最近病。
感染が進んだ桃は褐色の孔(あな)があきます。
今年は初めて果実に被害が及んだ実を見ました。
原因は農薬散布が甘かった枝があったからだと思われます。
散布が行き届きやすい(枝同士が混み合わない)剪定をするのが大切だと思います。
赤点病
こちらも自園で確認したのは今年が初めてです。
これ1個のみだったのですが、殺菌剤を10日おきに散布していても発生しました。やはり枝が混み合って殺菌剤の散布が十分に行き届かなかったためだと思われます。
やわ果
やわ果とは、柔らかい桃のことをいいます。
すぐに食べるのなら最高に美味しい桃ですが、運ぶのに耐えられなかったり、傷んだ所からカビが生えやすかったりするので選果場へは出荷できません。
こういう桃は自家消費したり、親戚や知り合いに配っています。
親戚が買い取ってくれて無人販売機で販売しているので、有難いことに余って廃棄ということはありません。
裂果(ヒビ)
自園では基本的に枝の下側(地面に近い側)に桃を成らせますが、良い位置に実がない場合は枝の上側(空に近い側)に実を成らせることがあります。
上側に成った実は、葉による雨除けがないので陽光や雨風を直接受けることになり、この様に荒れた肌になり、裂果(ひび割れ)に成ってしまう事がしばしばあります。
灰星病(はいほしびょう)
この桃はおそらく双胚果による核割れを起こし、そこに雨水と菌が進入しカビが生えたと思われます。
カビが生えた桃は加工用にも自家用にもできないので完全廃棄です。
殺菌剤を定期的に散布していても一定数出てしまいますが、壊滅的な被害になることはなりません。
変形果
桃栽培をする上でごく普通にある自然現象です。数ヶ月にわたり最低3回の摘果を行うのですが、こういう変形果は優先的に落としていきます。ただし、周辺に正常果(形の良い実)がない場合は収穫までならしておいて、自家用でいただきます。
木には個性があり、変形果が多めになる木があったりします。ほとんどが変形果のなる木を数年前に切ったことがあります。摘果でなんとかなる木は非常に手間がかかりますが、丁寧に落としていけば他の木と同じ様に良い形の桃を出荷することが出来ます。かなり忍耐力がいるので、体を壊さないよう、ほどほどを心がけるのも果樹園を続ける秘訣なのかもしれません。
スレ
風で実と枝葉が擦れあって、実に擦れた跡がついてしまいます。
摘蕾、摘果の段階で、できるだけ傷が付きにくい場所に実を残しますが、強風だとこうしたスレが出てしまいます。
画像は川中島白桃ですが、収穫期間に台風がきてたくさんのスレが出てしまいました。
害虫
シンクイムシの被害によるものです。
規格外の桃を全て親戚や知人、飛び入りで来るお客様に売って今日食べる桃がない場合は、虫が入っている部分を切り落として食べています。
殺虫剤を定期的に散布していますが、こちらも発生を0にするのは難しいようです。
害獣
ハクビシンの被害によるものと思われます。自園での対策は今のところ何もしておりませんが、今年は猟友会?の方々が近くでロケット花火を何度も打ち上げ追い払ってくださったので、毎日食べに来ることは無くなりました。
自園は人通りのある住宅や建造物に囲まれた果樹園なので、害獣による被害は少ないほうなのかもしれません。
双子の桃
双子の実は摘果のときに見つけやすく見逃しの少ない規格外品ですが、双子の実が収穫を迎えたらどんなだろうという好奇心から、あえていくらか残してみました。
なんとも絶妙な形をしています。食べてみたら、甘みがなく少し渋みがあり、美味しくはありませんでした。
他にも傷や未熟果などの規格外品がありますが、写真を撮っておりませんでしたので、追記できたらと思います。
これセーフかな?規格外かな?と迷うことは多々ありますが、何度か選果場に出してみて自分なりにセーフラインを学び、軌道修正していくと良いと思います。
日持ちする桃と柔らかくなりやすい桃
最後に、私がTwitterに投稿して一番反響が多かった(リツイート84、いいね576)役立つ知識をご紹介したいと思います。
こちらの内容は農家さんよりも消費者さんの方がとても反応してくださりました。
画像は暁星という品種の桃ですが、あかつきにも同じ特徴があります。
色の入り方で日持ちのする桃、柔らかくなりやすい桃が判断できます。
左は日持ちする桃で、赤がフラットに入っています。右は柔らかくなりやすい桃で、独特の模様があります。
私は自家選別をする時に右の桃がありましたら、格外にすることが多いです。
選果場へ出荷しても格外になることが多く、格外になった桃は買い取ってもらえず、農家の元に戻ることもありません。
こちらは桃農家の方はご存知の方も多いと存じますが、硬さを判断する際は地色をみた方が確実です。
桃は薄緑→白→黄色(クリーム色)になるにつれて熟して柔らかくなります。
左の桃はバリバリ食べれる食感で、リンゴの様に硬いです。右は香りも芳醇で桃らしくジューシーで柔らかいです。
地色が白い桃はその中間の香りや食感です。
スーパーに並ぶ頃には地色の緑色が抜けて白やクリーム色になっていることが多いかと思います。
どちらも美味しいので、お好みの硬さの桃を選んでみてくださいね。
レギュラー品として出荷できなかった桃の行方は
基準を満たさずレギュラー品として選果場に出荷できなかった桃は無人自動販売機で販売しています。
生食用として売るには信用に関わりそうな傷や形の酷い桃は自家用として消費したり、加工用として業者さんが買取ってくださります。
廃棄になる桃は極々僅かで、本当に食べれない桃(カビた桃、害獣に食べられた桃、虫食い部分)だけです。